あなたの為のインプラント
抜かれやすいのが、その奥にある親知らず。
残しておいても虫歯になるだけだから、痛くなってからでは抜くのが大変になるからと、理由にもならない理由の下に、何の罪もない無垢の親知らずが抜かれてしまうのを、今まで幾度となく目にしてきた。
人の身体にそのような不要なものなど、そもそも存在しないはずなのだが。
たとえ親知らずであっても、虫歯になったら治療をすればいい。
炎症が出て腫れ、痛みが出ても、投薬して、炎症を抑えれば問題ない。
そうして残った親知らずを、いざというときに移植に使うのだ。
確かにボクも、移植の成功率には当初いささか懐疑的であった。
しかし、患者の強い希望に合わせて施術して症例数を重ねるにつれ、その成功率がずいぷんと高いものであることがわかってきた。
変な話に聞こえるかもしれないが、今のところ50例に移植を行い、その成功率が100%。
なんだかできすぎた話だが、そのうちの10例に関しては、すでに術後5年が経過している。
親知らずの移植がこんなにうまくいくものとは思っていなかった。
始めはせいぜい60〜70%くらいかと思っていた。
確かに症例は選ぶ。
うまくいくだろうとふんだ移植しかしていない。
なぜなら、失敗すれば、問題のなかった親知らずまでダメになってしまうのだから、そこは慎重にならざるを得ない。
まず、成功に必要な条件としては、親知らずの根の状態。
枝分かれしていたり、下ぶくれの親知らずは、移植には向いていない。
先細りのスレンダーなものがいい。
次に、術者のウデと、衛生士の連携。
移植は時問との戦いである。
歯根膜の鮮度が鍵を握っているからだ。
親知らずの抜歯やその植え直しにたらたらと時間がかかっていては、歯根膜の鮮度が落ち、成功率は乏しくなる。
心筋梗塞や脳卒中の初期治療−生存率と同じイメージである。
いかに手際よく抜歯し、すんなりと移植先に固定するかにすべてがかかっている。
こうして首尾よく収まった親知らずは、もともとそこにあった歯であるかのように噛むことができる。
インプラントと同じように両サイドの歯を削ることもない。
そして、インプラントと決定的に違うのが、自分の歯だということ。
インプラントのような異物ではない。
インプラントの常套文句である、自分の歯がもう一度生えてきたような、ではなく、まさに文字通り自分の歯がもう一度生えるのだ。
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